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はじめに2 〜流派での経絡経穴の捉え方〜

まず、様々感じたことを書き綴っていく前に、始原東洋医学という流派での身体の捉え方について書いておこうと思う。治療法について・よくある質問とも重複するかもしれないが、概略的なものや患者さんに驚かれる内容を中心に書いてみることにする。

※流派の中でも、感覚の特異性の違いや解釈の仕方の個性、臨床経験により、少し理解の仕方や表現の仕方に差異があると思うので、始原東洋医学をベースに治療に従事している私流の表現として捉えて貰えたらと思う。

 

・古典に書かれている内容について

昔は感覚が鋭敏な人も多かったのかもしれない。その人たちが誰でも参考にできるようにと書き残したものが古典であり、経絡経穴なのではないかという推論が流派で言われていた。

 

・始原東洋医学的な経絡経穴の捉え方

身体に自然治癒がしっかり働いている状態であれば、不定愁訴はないし、あっても寝て休むと治る。経絡経穴もそんなに活性化していない。経穴を刺激すると古典の経絡図に似たルートに気(エネルギー)は走る。

身体の自然治癒が間に合わないくらいに、睡眠不足や過労などで疲れが溜まっていった場合、寝ても回復しづらくなっていく。朝も疲れが残る。または、突然の事故など不測の事態に身体の自然治癒が間に合わなくなる。その場合、動ける部分で身体は補おうとする。そして経絡経穴も古典の経絡図の枠を超えて身体中で連絡しあい、気(エネルギー)を必要な場所に充足し自然治癒で負傷部位を回復しようと活性化する。気(エネルギー)は元気な臓器や、外界から取り入れようとするが、この時の気の流れるルートが経絡、外界からの取り入れ口が皮膚に現れる経穴という訳である。緊急事態であるほど、経穴は思いも寄らない所に出現し、触った時の「ここ!」という独特な響きの感覚は患者さんも認知できることが多い。自然治癒の滞ったポイントは流派では気滞と表現し、その気滞を解消すべく、そこからの経絡を探り、経穴により必要とされている刺激をする。

 

つまり、よく患者さんに驚かれ聞かれる、

・「ツボって出現するものなんですか?」ということについては、『身体の自然治癒が鈍っている状態だとツボが出現するんです。ツボが出なくなった時点で治療が終わると思って下さい』という返答になる。

・「見えるんですか?」とも聞かれるけれど、『流派で磨いた感覚で視覚を通して感じているんです。自然治癒が鈍っている部位を見つけています』と回答している。

 

流派で磨く特殊感覚は、経絡経穴を細かく感じるための手を使った【切診】、身体を大きく捉え身体全体のバランスや滞りを観察するのに適した目を使った【望診】とがある。どれだけ力が抜けているか、思考でイメージなどの邪魔が入っていないかで、精度も増していく。感覚の個性もあり、感覚研鑽が深まるほど同じ流派でも個性が出てくるように思う。

 

流派で一番大事にしているのは、経穴の種類は二種類(プラス点とマイナス点)があり、それぞれに合う刺激が真逆なため、それだけは分別できるようにということは言われている。始原東洋医学を名乗って治療している場合、それはできているはずである。深めていくと、二種類に分別仕切れない繊細な刺激も扱えるようになると私は考えている。

 

刺激の仕方としては、

・プラス点:鍼(先をN極に磁化したもの)、お灸、銅のていしん・粒、チタン粒、ダイオードのカソード、磁石N極、赤色

・マイナス点:鍼(先をS極に磁化したもの)、お灸鍼(温めが目的ではないので熱さを感じないものがいい)、アルミのていしん・粒、亜鉛粒、ダイオードのアノード、磁石S極、青もしくは黒

というものなどが挙げられる。指も指向性があるので、プラス点マイナス点を意識した指圧のような治療も可能。

 

つまり、【望診】によって、自然治癒が滞っている場所を探し、【切診】によって、活性化し出現している経絡を追い、経穴を見つける。そして必要な刺激を必要なだけする。この時プラスとマイナスを間違わないのはもちろん、何を使って刺激するかは経験によって判断している。私が今よく使うのは、鍼・灸・銅ていしん・ダイオード菅・粒・赤ペン・指でその状況によって使い分けている。